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 幌尻岳(日高にある幌尻岳とは別の山。十勝幌尻岳とも言う。)

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  東ヌプカウシヌプリ 

   砺波山 手向けの神に 幣奉り 我が乞ひ能麻く

 もう少し、この万葉の和歌にこだわって見よう。砺波山というのは、観光案内のパンフレットを見ると「富山県小矢部市と石川県津幡町との間に位置する倶利伽羅山の古称」とある。加賀と越中を結ぶ「旧北陸道」がこの地を通っており、古くから交通の要所であったという。源氏と平家の「倶利伽羅合戦」の地としても有名である。
 この和歌で注目したいのは、「砺波山」という山を「神」と崇め、幣を奉って祈るという宗教上の慣習が、古代の日本には、あったことである。
 山を神として崇め、幣を奉るというのは、古代の日本に限らず、アイヌの人々の信仰にも共通して見られる。言葉も同じくノミというのであるから、これは、もはや偶然の一致とは言えないと思う。

 ここに例を挙げたのは、吉田巌「『民族学研究』編」(北海道出版企画センター)で、アイヌの故老、「坂下徳二郎氏談話」(大正八年ー当時伏古村に在住ー現在は帯広市と芽室町に編入されている。)から、坂下家の神垣(ヌササン)を東から西へ眺めた図である。※吉田巌(1882~1963)は、教育者でアイヌ研究家。母は二宮尊徳の孫で、叔父の尊親を頼って来道。十勝帯広を中心にアイヌの子どもたちの教育や生活環境の改善に尽力すると共にアイヌの研究に熱心に取り組んだ。

 イナウは全部で6本立てる。つまり、6つの神を奉っている

 ①ポロシリウンカムイ  幌尻岳~帯広市と中札内村の境界にある山。※北海道には、日高と十勝の二つの幌尻岳があり、この「ポロシリウンカムイ」は、十勝にある「幌尻岳」のことである。

 ②コタンコルカムイ   コタン(聚落)を守る神

 ③ニヤシコルカムイ  フクロウの神

 ④チプタチカプカムイ  船を掘る鳥の神(キツツキのことか?)

 ⑤ホロケウカムイ    狼の神

 ⑥ヌプカウシウンカムイ 士幌町と鹿追町の境界にあり、正式には東ヌプカウシヌプリという。士幌町と鹿追町の境界にある山。鹿追町には、西ヌプカウシヌプリがあるが、士幌側からは見えない。

 さて、ここで注目したいのは、6本のイナウのうち2本は「幌尻岳」「ヌプカウシヌプリ」の2つの山に捧げられていることである。写真を見ると分かるように、この2つの山はどちらも山容が堂々としており、広い十勝平野にあって、どの方角からも仰ぎ見ることができる。