決戦憲法関ヶ原歴史編のblog

ニーチェ哲学的見地によれば、「憲法9条」を頑なに墨守する思考は、一種の「宗教」であると言える。私は、日本と日本国民を敵としない「憲法学」「歴史学」を追究する。

カテゴリ: 世界史を学ぶ

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 「森発言」を巡って野党議員の白い服を見て、眠っていたブログが目を覚ました。「白い服」はアメリカの婦人参政権運動の象徴らしい。そこで、米国の婦人参政権運動について調べてみることにした
 資料として用いたのは、『原典アメリカ史 第五巻 現代アメリカの形成下』(岩波書店)と『世界歴史大系 アメリカ史 2』(山川出版)及びインターネットで検索した杉田雅子氏著「エレノア・フレクスナー著『一世紀の闘争:アメリカ合衆国の女性の権利運動』における女性の力と社会の変化」である。
 さて、2020年は、アメリカ合衆国において、女性に参政権を与えるという憲法修正法案が成立して100年にあたる。もうお気づきのことと思うが、100年前即ち1920年は、第1次世界大戦が終結し、ヴェルサイユ講和条約が締結された翌年にあたる。ということは、女性参政権と第1次世界大戦とは何か関係があると考えてもおかしくない。
 杉田雅子氏の論攷によれば、「フレクスナーが、世の中の変化という点から女性参政権運動の最終段階で獲得に大きな力を与えたととらえたのが、1917年のアメリカの第一次世界大戦への参戦である。」という。(p10)
 当時の米国には、女性参政権運動を行う主要な団体には、キャリー・チャップマン・キャット会長が率いる「全国アメリカ女性参政権協会」戦闘的な運動家アリス・ポール率いる「全国女性党」の二つがあった。杉田論文によれば、フレクスナーは、二団体のうち、女性党に一定の評価はしているものの「あくまで全国アメリカ女性参政権協会の運動が勝利に結びついたとみなしている。」
 第一次世界大戦時のアメリカ人女性の活躍の様子は、『アメリカ史2』「第2章 革新主義改革と対外進出」において、次のように述べられている。
 「戦時動員による機会を最大限につかんだのは女性であった。黒人をふくむ約四十万人の女性があらたに就労し、すでに就労していた約八〇〇万人の女性の多くも家事サービスのような低収入の職から、より高収入の産業労働に移り、女性の市街電車運転手、鉄道機関士、警官、旋盤工など、めあたらしい光景が出現した。」(p177)
 続けて『アメリカ史2』では、「労働の場以外でも、女性の戦争への貢献は大きかった。」として、全国アメリカ人女性参政権協会の戦争協力について次のように述べる。
 「女性参政権運動の指導者キャリー・チャップマン・キャットとアンナ・ハワード・ショーは国防会議の女性委員会をつうじて戦争に対する女性の支持を動員し、家庭の主婦も、食糧庁が推進した食糧節約に決定的な役割をはたした。女性の職場進出と戦争貢献は彼女らの参政権獲得を可能とした。」女性党は戦争に反対したが、「キャリー・キャットがひきいる全国アメリカ女性参政権協会は、二〇〇万のメンバーをあげて戦争を支持した。」(p178)のである。
 こうした女性参政権運動家の戦争協力に対して、当初女性参政権に消極的だったウイルソン大統領も上院議員に賛成票を投じるよう議会で次のように演説した。(要旨)
女性の奉仕がなかったならば、第一次世界大戦を戦えなかった、女性の功績はあらゆる分野におよび、この戦争で女性は男性のパートナーとなった、だから権利と特権のパートナーとしても認めよう」と。(杉田論文、p12)
 なお、女性参政権を認めた合衆国憲法修正第十九条については、今回言及できなかったが、「合衆国憲法修正第十八条及び第十九条」(『原典 アメリカ史 第五巻』所収、p370~378)を参照されたし。





 


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 アメリカ人は戦争が好きな国民なんだ・・・という言説が日本のマスメディアをはじめ巷に溢れたのは、確か湾岸戦争の頃ではなかったかと思う。今でも、「アメリカ人は戦争が好きなんだ」というイメージを抱いている日本人は案外多いのではないのかと思われる。
 しかし、私に言わせれば、この「アメリカ人は戦争好きな国民」なのだというイメージは、極めて浅はかで、愚かなものである。この言説の背後にあるのは、75年間も米国の保護国として自らの防衛をないがしろにし、米国の覇権秩序の下で、ひたすら平和と繁栄を謳歌してきた日本人の病理に深く根ざしているということができる。
 そうした日本人の間には、軍事や防衛などの汚れ仕事は、米国民のような「戦争好きの国民」にまかせ、自分たち「平和愛好国民」たる日本人は、「話せばわかる外交」に徹すべし・・・との心性がよこたわる。
 だが、こうした永年抱いてきた日本人の心性に冷水を浴びせる事態が米国に起こった。殆どの日本人が予想できなかったドナルド・トランプの大統領当選である。トランプのスローガンは「アメリカン・ファースト」である。このことは一体何を意味するのか?
 「アメリカン・ファースト」とは、1930年年代の米国のローズベルト外交に反対して、「極東の戦争に介入するな。」「米国の外交は中立主義に徹すべし」とする「アメリカ第一委員会」の主張でもある。
 ということは、トランプの目指す外交ー軍事・防衛政策のねらいは、1930年代の「中立主義」の時代へと米国を引き戻すことにあるのではないのか。トランプは、米国は世界の警察役を降りると言い出している。つまり、米国は、覇権国家の座を放棄しようとしている。もはや、米国には、覇権国家として君臨するだけのパワーが衰えてきているということだ。
 以上のことを念頭に、今回のブログでは、第一次世界大戦から第二次世界大戦に至る米国の戦間期に於ける「戦争と平和」を巡る論調と国民の意識の変化をとりあげることにする。
 

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